2023年2月 28 日

結構前のことですが、香川県高松市にある四国村という建物園を訪れました。
建物園とは建物を一箇所に移築し、保存、展示する施設のことです。東京都の江戸東京たてもの園や愛知県の明治村は有名ですが、こちらの四国村では四国にあったさまざまな建物が山間の広大な敷地内に移築展示してあります。

入口。渡るには勇気のいる木製の吊り橋が。もちろん迂回路もあります。

商家や蔵なども展示してありますが、ここで印象的だったのは農家住宅や作業小屋など農村生活に根差した建物でした。

こちらの農村住宅、興味深いのは大壁で仕上げた土塗り壁です。一般的な伝統工法では、真壁といって柱、梁などの構造部材は屋外に露出させ、その間の部分を土塗りにしますが、こちらの建物では構造部材を覆うように土が塗られています。また、外壁は板張り等をして風雨からの保護をするところ、土壁がそのまま現しとなっていて、独特の趣があります。何か理由があってこのような作り方になっているのでしょうが、このような地域性が見られるのは面白いですね。

なかでも一番驚いたのはこの作業小屋です。円形の平面形状に、こちらでも大壁の土塗り壁。急勾配の藁葺き寄棟屋根の外観はおよそ日本の建物には見えないです。この建物は砂糖しめ小屋といって、部屋の中央の臼のようなものでサトウキビの搾汁作業をするための小屋として使われていました。どうしてこのような形状をしているかというと、中央の搾汁機械の動力として家畜を繋いで周りをぐるぐると歩かせる為なのだそうです。

モダニズムの巨匠である建築家のル・コルビュジェは工場や穀物サイロを見てそこに機能美を見出しましたが、この砂糖しめ小屋も機能から生まれた形をしていて、伝統形式から遊離した、タイムレスな雰囲気になっています。

これらの建物は生活様式、建築工法も現代とはまるで違う訳ですが、機能から読み解くと理解できたような気になるのが面白いところですね。

YS